第十三話 CHAPTER4、罠(3)

 田代は首を捻った。今、東京では、この司法書士、行政書士が過剰気味だとも言われている。その何割かは弁護士事務所やコンサルタント会社などに就職できず、かといって個人で大々的に商売をする体力もないから、自宅を事務所ということにして行う個人起業だ。

 その怪しさが余計にネックになって、依頼がほとんど来ず、資格を取ったものの、月収は学生の小遣いぐらいにしかならないというケースも多い。そういった背景と、この桂川興産のチラシを引き合わせると、なんとなくピンクチラシと司法書士が一緒くたなのが、田代にはわかる気がした。

 “クリーム” のチラシに比べ、ほとんど気にとめていなかったそのチラシを、田代はくまなく、細かい文字のところまで慎重に見た。チラシの左下にごく小さな文字で、この広告主とおぼしき司法書士の名前が出ている。やっかん・免責事項などの細かい必須事項を、限られたチラシ面に詰め込み過ぎて、肝心の責任者先生の名前を入れるスペースが足りなくなったのだろう。ゴマ粒よりも小さな文字で、 【司法書士・谷中 洋司】 とあった。

「名前が判明すりゃあ、どうにか辿れるかも知れねぇ……。この谷中洋司とかいうやつは、桂川興産と必ずなにか繋がりがある……」

 田代はそれから、深呼吸を一つすると、携帯電話を取り出して、ダイヤルを回した。川嶋に架けるのである。川嶋はまんじりともせずに待っていたのか、すぐに電話に出た。

「おう、俺だ。何かわかったのか? 田代」

「川嶋さん、お手数かけてすみません……。司法書士って今、調べられますか?」

「司法書士?」

「ええ。郷ちゃんをさらっていった桂川興産が借りていた、電話応対代行の電話番号の一つが、谷中洋司とか言うやつの、司法書士事務所なんですよ。ヤクザ屋さんは弁護士とか、税理士とか、だいたいよく知ってるでしょう? だから、川嶋さん知らないかなと……」

「谷中洋司、だな……。わかった。俺に心当たりはないが、俺の子飼いの名簿屋ならば調べられるかも知れねぇ。すぐ調べさせよう」

「た、頼みますっ!!」

 田代は祈るように電話を切った。それから3人は、タバコを吹かしては消し、消してはまた吹かすということをして、川嶋から連絡が来るのを待った。まんじりともせず、待ちつづける時間は、1分1秒が妙に長く感じられる。30分ほど経過しただろうか。田代の携帯が水戸黄門を奏でた。すぐに応答する田代であった。

「か、川嶋さん?!」

「おう田代。谷中洋司、わかったぞ?司法書士試験に合格したのは今年だ。年齢は22歳……」

「22歳?? そりゃあまた、ずいぶん若いね」

「ああ。谷中洋司自体は、ただの小僧だが、調べてみたら面白いことがわかったぞ? 谷中の父親は、政財界で問題児と噂されている、谷中信一郎たになかしんいちろうという男だ」

「谷中信一郎……?」

 オウム返しに、田代が聞き返した。

「父親の谷中は、元は政治家志望で、いろんな議員の秘書を転々とした男でな。政界で名をせることはなかったが、関わった議員はみんな大物政治家として活躍している。いわば、政治家プロデューサーとでも言うべきヤツだ。自分が意図する代議士の選挙工作をしたり、資金をかき集めたり、邪魔者を消したりと、汚い噂の絶えない男だ。その谷中は6年ほど前から、飯田継男いいだつぐおという国会議員の後援会会長をやっている……」

「飯田継男?!」

 その名前に、田代は仰天した。山本も眼を剥いて、田代が話している携帯電話に後部座席から顔を近づけた。

「飯田継男、東大出身で元厚生官僚から、若くして政界に転向した筋金入り厚生族議員だ! なるほどな……。じゃあその谷中の関係先に、郷ちゃんがいる……?」

「しかし、早く郷原を見つけ出さねぇと、危ない。お前らは俺ほどあいつを知らない……。郷原はキレると、何をするかわからん男だ。手遅れになる前に、俺が今から言う谷中の関係先を片っ端から当たれ! いいな!」

「う、うわ、わかりましたっ!」

 そういうと、田代は大急ぎで、ポケットからペンと手帳を取り出した。川嶋が片っ端から読み上げる谷中の関係先を、必死に手帳にメモしてゆく。

「何かあったらすぐに俺に電話をしろ。いいな田代!」

「りょ、了解!!」

 電話が切れた。田代が手帳にメモした谷中の関係先は、自宅と、谷中が取締役を務める倉庫会社、その会社の子会社に、飯田継男の後援会事務所など、全部で5件あった。

「これを全部調べるんスかぁ……? 場所は全部首都圏だけど、どこに最初に行くのかで、時間のかかりかたがだいぶ違うじゃないっスか。どうすんだよ田代さん……」

「うーん! そうだよなあー! どーしよ!」

 ムンクの叫びのように、頭を抱えて悩み果てる田代であった。

「うーん、うーん……。こんなときは……」

「こんなときは……」

「う、占いで決めるか! いっそ!」

「んあ~??」

 田代はそういうと、ついさっき、ファミレスで山本が見ていたスポーツ新聞を取った。裏面から数えて2ページ目に、エロ記事とともに載っている、フェリシア・M・カサンドラ先生のデイリー星占いに目を通した。

「えーと、うーと。郷ちゃんの星座は……。そういえば知らねぇ!」

「ダメじゃん……。田代さんの運勢でいいんじゃねぇの? なんかあったら、社長に怒られるの田代さんなわけだし」

 頭をボリボリ掻きながら、面倒くさそうに浜崎が言った。

「うあー! まぁ、参考までに見るかぁ~……。えーっと、おとめ座、おとめ座……」

「いい年しておとめ座だって。プププ……!」

「うるさいなぁ……。おとめ座……、あった……。なになに?? “望み通りの方向へ進展がある日です。特に親しい人への頼み事がある場合、話してみるといい反応が。その一方で、人間関係には慎重さが必要。甘い言葉や誘惑に乗りやすいですから、冷静になって” だって。うが~! カスほども参考にならねぇ、フェリシア・M・カサンドラぁ~~!!」

「しかも書かれていることが真逆じゃん。積極的に働きかけろと言っておきながら、人間関係には慎重になれだって。どんだけ保険トークだよ……。俺、前から思ってたけど、占いの文章ってさぁ、なんかこう、イタいんだよな~……。どれを読んでも」

「確かにな……。こんなモン、なんであるんだろって、世間のヤツはもっとちゃんと考えたほうがいいだろうな」

「あの………」

 山本が、口を挟んだ。

「ん?」

 目線は新聞を見ながら、肩と首だけ振り返る田代である。

「あの……、差し出がましいようですが、そんなことするより先に、とにかく探し始めたほうがいいのでは……」

「おお! そういえばそうだ! こんなことしてる場合じゃねぇ! 気が動転してつい、ひとりノリツッコミをしちまった。行くぞ!」

 サイドブレーキを解除し、アクセルを踏み込む田代であった。

「最初はどこから?!」

 浜崎が聞いた。

「とりあえず、谷中が役員を務めている昭島の物流倉庫だ」

 そういって、ステアリングを川崎街道に向ける田代。ここから昭島へは、昼間だと小1時間かかるのだが、明け方で交通量が減っているため、30分程度で到着した。

 昭島とか立川、福生、武蔵村山などの多摩北西部は、都心に向けて集荷・出荷されるための倉庫が数多くある。

 しかし、谷中が役員をしているレインボー物流の倉庫周辺には、ファミレスで見かけたフェアレディZと、白いワゴン車が見当たらない。しかも、集荷と出荷の荷物の積み出しが頻繁に行われていて、とても人を監禁して、痛めつけたりなどしている余裕は無さそうだった。

「クソッ! たぶんここは違う……。無駄足だったか!」

「さっき川嶋社長が教えてくれたこのメモを見ると、レインボー物流って、千葉の流山にもあるでしょ? そっちにも行くんスか?」

「いや、たぶん、そこもここと同じだ。これでわかった。郷ちゃんが監禁されているのは、倉庫じゃない……」

「このあとで近いのって言ったら……、赤坂にある飯田議員の後援会事務所、それと、初台の谷中の自宅マンション、銀座にあるレインボー物流のビル……。そんな感じっスかね?」

「……………」

 田代は、夜明けが近い闇の空を、じっと見つめながらステアリングを握り、考えていた。

「いや、違う気がする……。監禁されているのはそんなところじゃない……」

「でも、他に手がかりはないじゃないっスか」

「まぁそうなんだが……。そうだなぁ、とにかく都心へ戻りながら考えよう」

 アクセルを踏み込む田代だった。とにかく、多摩から再び都心へと向けて走り出す。郷原はどういうわけか、23区内に居る……。そう思えてならなかった。

「………………」

 山本は、ぼんやりと景色が流れるリアウィンドウを眺めていた。それをミラー越しに見る田代であった。

「どうしたよ先生……。元気無いじゃない……。まぁ、こんな状況で元気出せってほうが無理だと思うけど……」

飯田継男いいだつぐお……」

「ん……?」

「飯田継男さん、話題になってましたよねそういえば……」

「話題?」

 さっきからやたらと、車内に煙を吐き散らしている浜崎が、山本を振り返った。

「ええ。週刊誌やワイドショーで数年前……。ありがちな、浮気問題でしたが……。ちょうど、時雨製薬が作った血液製剤から感染したウィルス性肝炎が、深刻な社会問題になっていて……。世論は時雨製薬が悪い、いや、認可した厚生省が悪いと……。今回は厚生省が悪い、ということで納めてもらいたい一心で、時雨製薬から飯田さんが所属する派閥や、厚生省法案関連の委員会の議員たちに、莫大な賄賂が行われて問題になっていた。それと同じ時期に、よりにもよって厚生省と縁の深い飯田議員の浮気問題が持ち上がり……。飯田議員の奥さんは、与党大物の、冬野圭介氏のめいで、これまた国会議員の冬野こずえさん。旦那の浮気なのに奥さんがいっしょうけんめい、テレビでお詫びして……」

「………??」

 浜崎は、腑に落ちない顔をしていた。田代はさすがにいぶし銀だけあって、そういうことはよく覚えていた。

「そうだった。意地悪なワイドショーが、患者たちを泣かせておきながら、自分はホテルで楽しんでいたのかと、毎日のようにやっていた。そのうえ、その愛人がずいぶん若くて、飯田とは20以上も年が離れているとか。冬野こずえさんが、偉大な女性に見えたよ。旦那の浮気を許すんだから」

「飯田議員はもしかしたら……。その……。僕の、勝手な想像ですけど……」

「ん……??」

 運転しながら田代は、思いつめた表情の山本を、バックミラー越しに見た。

「その……。本当に低俗な想像なんですが……。こんなこと口にしていいのかっていう……」

「なによ、言ってみなよ。ここは取調室じゃないんだ。自由に話していいんだよ山本先生」

「……飯田議員の奥さん……。冬野圭介氏の姪の、冬野こずえさん……。障害のある子どもを、引き取ったっていうニュースがなかったでしょうか……」

「えー? そうだったぁ?」

 運転しながら田代は、大きく驚いた。この事件の報道は、関係者周辺のプライバシーに関することまで多数出回り、お茶の間で見ているほうもすべての情報を拾うのは至難の業だった。

「……そうだったっスよ。ほら。記者会見のニュースアーカイヴが残ってるっス。 “浮気発覚で大ヒンシュクの飯田継男議員と、その妻の冬野こずえ議員夫妻、障害ある乳児を養子縁組” って」

「ああ……??」

 運転しながらチラリと、浜崎が差し向けるスマホに目をやる田代だった。徐々に記憶が巻き戻った。

「あー!! 思い出したよそういえば! これで世間は、飯田議員とそのバックについていた飯田の派閥のトップ、冬野圭介、そういうものを叩けなくなったんだ。すごい汚いやり方だと俺は思ったが、世間はそういうのに弱いんだ。見事に火消し効果が出て、それ以来過熱報道は下火になったよな」

「養子縁組会見自体が、もう、ほんのちょっとだったみたいっスからねぇ……。プライベートなことなので、各プレスもあまりつつけなかったんじゃないっスか」

 後部座席から二人の会話を聞いていた山本は、ポツリと言った。タイミング的におかしい、と――。

「…………――!!」

 田代ははっとした。確かに、タイミングが良すぎる――。

「ということは、もしかして……??」

「――本当は、飯田夫妻が引き取った養子というのは、あの、池田さんに託した赤ちゃんではないのかと――」

 山本が言う。しかし――。

「いや、待ってくれ。だってその赤ん坊は、死亡診断書が書かれていたんだろ?」

 田代は首をかしげた。確かに、池田史郎が山本の病院から赤ん坊を連れて行ったタイミングと、飯田夫妻の養子縁組の話は時期的にほぼ同時のようだ。だが――。

「――……冬野こずえさんは、確か、長年不妊治療を受けていたはず……。ということは……。邪推かも知れませんが……。考えられるとしたら……」

「……若い愛人に、産ませた子ども……???」

「……もしかしたら、ですけど……。もしもそうなら、不妊症で、40代の飯田夫妻にとっては、親になれるこの上ないチャンスだったはずです」

 山本の言葉にかぶせるように、田代が言った。

「いや、ちょっと待て。でも、連れ去られた子はどこかでドナーにさせられて、死亡したって……。え? え?」

「……ちょっと、ひっかかるんです……。確か、飯田議員が浮気した相手とは、一部、未成年だったというような報道が出ていませんでしたか……??」

「え? え?」

 田代が戸惑っているうちに、IT職人の浜崎がすばやく過去のアーカイヴを探った。

「あ、ホントだ。ちょっとそういうキャッシュが残ってるっスよ」

「え? え?」

 混乱で、田代の頭はついていけなかった。山本は、医師らしく冷静な意見を述べた。

「未成年の女の子が、生殖能力の衰えた男の子どもを身ごもると、肝臓・腎臓・心臓・脳などに障害があって生まれてくるリスクは跳ね上がるんです……。だから未成年への性的虐待は、法律で強く抑止されている……。もしも、その愛人に子どもをを産ませて、それが障害児だとわかれば……。世論を黙らせることができ、すべて飯田議員は得をするわけで――。そう思うと僕は――……」

「ま、マジ?!」

 思わず仰け反った浜崎が、後部座席でうつむいている山本を見た。前方を睨んだ田代は集中するためにタバコを咥えた。

「……もし、未成年のむすめを妊娠させて、挙句にその娘が障害児を産んだのだったら……。すべて丸く収められる、まさに奇跡の神のアイテムだ。唯一の問題を除いては――」

「唯一の問題……?」

 浜崎が、田代の咥えタバコに火をつけてやりながら言った。

「子どもを、どうやって愛人の子だとバレずに、自分たち夫婦に迎えるかという問題だよ。つまり、いろいろ考えた結果、愛人に子どもを産んでもらったほうが得だったので、飯田議員とこずえ夫妻はこっそり産ませたが、その赤ん坊はそのまま認知できず、戸籍を取得するわけにもゆかない。それで、身元不明の赤ん坊と、すり替えた――。なんて可能性もあるかもな……。ついでにその子が健康で、臓器移植ができる血液型なのであれば、なおさら一石二鳥だ」

「………………」

 山本は、唇を噛んで考え込んでいた。病院の移転作業を手伝っていたとき見つけた、あの死亡診断書を、コピーして取っておくのだった、と、今更ながら悔やまれた。

「あの人……。僕の病院にかつぎ込まれてきたとき、どう見ても身寄りのない、薄汚れた、ホームレスみたいな女の人だった。妊娠届けさえ出してくれていれば、あのお母さんと赤ちゃんの身元がわからないなんてことは、なかったのに……。僕があのとき、池田さんの里親協会にあの子のことを相談さえしなければ……」

 山本は、頭を抱え込んでいた。田代も浜崎も、かける言葉が見つからなかった。しかし、気になるのは飯田の愛人だ。元からニュースメディアに写真や名前等、一切取り上げられなかったのは、やはりその女性が、未成年だったからか――。真相は、その女性だけが知っているだろう。

「飯田議員の浮気相手だっていう女って、銀座のクラブでアルバイトしてたらしいスね。二人はどうも銀座で、お客とホステスという形で知り合ったんじゃないかと週刊誌ネタが」

 スマホで、過去のニュースをあれこれ見ながら、浜崎がつぶやいた。

「水商売を1度でもやった女は、なかなか水商売から足を洗えないもんだ。元銀座のホステスなのだったら、今もどこかで店をやってるかもな……。その……」

「……………」

 田代は考え込んだ。とても引っかかる――。

「ものすごく飛躍した推理だけどさ――」

 田代のつぶやきに、山本が視線を向けた。

「もしかして、飯田の愛人だったその若い女って、案外、飯田を売り出したくて仕方がない谷中が、身請けして、隠していたりしてな……」

「………!!」

「あり得ない話じゃないだろ? 交際時、未成年だったならなおさらだ。余計なことをぺらぺら話されても困る。ほとぼりが醒めるまで、誰かに愛人を監視させているんじゃ……。だとすると、もしかして郷ちゃんは、その女が谷中にやらされている店にいるのかも……? 閉店後のスナックとか、クラブ……。誘拐した男を連れ込んで、痛めつけるのにうってつけの場所だ」

「で、でも、ど、どうやってその店を探したら……??」

「うーん!! そうだよなぁ~!! あの女の子、なんて名前なんだろう~!! ワイドショーでは、A子さん、という名前になっていたけど……」

 助手席でタバコを吹かしていた浜崎が、見かねて助け舟を出した。

「んなの、2ちゃんねるで調べりゃいいじゃないっスか」

「に、2ちゃんねる???」

 浜崎は、冷ややかな呆れ顔を作ってみせた。

「これだから中年は……。そんなに世間を騒がせたネタなんだったら、絶対に2ちゃんねるに意地悪な書き込みがしてあるから、2ちゃんの鬼女きじょ板とか調べれば、その子の名前と今の消息がわかるんじゃないんスかね?」

「き、鬼女板???」

 きょとんとする田代に、浜崎はあきれ顔で教えてやった。

「鬼女ってゆーのは、今の飯田議員の話みたいな、社会にはびこる不正を許せない主婦軍団っスよ。特に有名人のだらしない下半身には厳しいんス。主婦ですから。さらにヤツらはヒマだから、何か事件が起こると徹底的に容疑者の住所、氏名、勤め先、出没場所などを調べ上げて、あくまでうわさ、という形にして掲示板に書き込む鬼畜っス。そーゆうのがネット掲示板にはいるんス」

 田代は、眼を輝かせた。

「は、浜崎ちゃん、お願い……。俺、いまだにガラケーなんだよ!! スマホで2ちゃんねる調べてよぉ!!」

「しゃーないな。んじゃあ、とりあえずどこか、車をちょっと止めて」

「わ、わかった!!」

 田代は、車をすぐに大通りの路肩のパーキングエリアに止めると、運転席から身を乗り出して、浜崎のスマートフォンに見入った。外は少しづつ、濃闇が薄闇へと変わりつつあった。

 

☜1ページ前へ戻る

☞次のページへ進む

⤴小説TOPに戻る

酒井日香の占星術小説はここから

続編・予言者Ⅱはこちら