第十三話 CHAPTER4、罠(3)
田代は首を捻った。今、東京では、この司法書士、行政書士が過剰気味だとも言われている。その何割かは弁護士事務所やコンサルタント会社などに就職できず、かといって個人で大々的に商売をする体力もないから、自宅を事務所ということにして行う個人 ...
第十二話 CHAPTER4、罠(2)
カウンターの上の水割りグラスの中で、大きな氷がくるりと揺れた。自分以外にお客のいない店内。妙に静かだった。
カウンターの奥では、十数年来の愛人である久子が、川嶋のために惣菜を作っている。その顔を、水割りを飲みながら時折 ...
第十一話 CHAPTER4、罠(1)
時刻は10時を30分回ったが、桂川興産の連中とおぼしきやつらは、まだ現れない。
郷原は、浜崎に、自分の携帯電話を渡しておいた。それからひとり男子便所に入り、便器を一つ陣取って、ドアの外に故障中の張り紙をした。便座の蓋 ...
第十話 CHAPTER3、調査(3)
郷原の耳に、かつて占い師の騙しの手口を叩き込んでくれた老人の声が響く。
(いいか郷原。人間の真実はたった一つ……。欲だ。人は誰もが醜みにくい、欲望という名の汚物を抱えている。神秘など信じるな……。人間の醜い欲だけを信じ ...
第九話 CHAPTER3、調査(2)
田代の話は、こうだ。
しらゆりテレフォンサービスに、郷原から託された、03―××××―△△△△という番号を調べに行った田代は、そこの社長からこの番号をここ何年も、ずっと使っている業者が“桂川興産かつらがわこうさん”とい ...