第二十二話 CHAPTER7、一夜(3)
あかり――。
深い霧の中で、懐かしい男の声がした。あかりは声のするほうへと夢中で走っていった。
(どこ……? どこにいるの? お父ちゃんっ! あたしはここにいるよっ! みんなみんな、誰も居なくなっちゃったよ ...
第二十一話 CHAPTER7、一夜(2)
「あのね、一人で飲むからそんな、アル中みたいになっちゃうんだよ。落ち込んでたり、辛いときはね、余計に一人で飲んじゃダメなの。ずぶずぶになって、そんな自分にまた嫌気が差して、それを忘れるためにまた飲んでって、繰り返しになっちゃうんだよ… ...
第二十話 CHAPTER7、一夜(1)
郷原悟と、北山あかりが、なんとなく同じベッドで眠っていた頃、都内某所にあるボクシングジムでは、一人の男がスパーリングの練習をしていた。
男の年齢は、かなり若そうで、青年といった感じであるが、顔色は冴えず、目の色は苦悩と ...
第十九話 CHAPTER6、対決(3)
村井に指示を出し、池田にしばらく好きにして待つよう伝えたあとで、川嶋が郷原をすぐに怒鳴った。
「そうだよ! 寝てなきゃダメだ!」
山本もすぐに川嶋の声に賛同して、どうやら悪寒がぶり返してきたらしい郷原を、寝 ...
第十八話 CHAPTER6、対決(2)
池田がまだ厚生労働省で、法人担当課長をしていた頃――。
池田の上司だった官僚が、早期定年後に天下りとして時雨製薬の役員に就任した。その上司と池田は、かなり親密であったらしい。時雨製薬に上司が籍を移してからも、ちょくち ...