第二十二話 CHAPTER7、一夜(3)
あかり――。
深い霧の中で、懐かしい男の声がした。あかりは声のするほうへと夢中で走っていった。
(どこ……? どこにいるの? お父ちゃんっ! あたしはここにいるよっ! みんなみんな、誰も居なくなっちゃったよ ...
第十九話 CHAPTER6、対決(3)
村井に指示を出し、池田にしばらく好きにして待つよう伝えたあとで、川嶋が郷原をすぐに怒鳴った。
「そうだよ! 寝てなきゃダメだ!」
山本もすぐに川嶋の声に賛同して、どうやら悪寒がぶり返してきたらしい郷原を、寝 ...
第十八話 CHAPTER6、対決(2)
池田がまだ厚生労働省で、法人担当課長をしていた頃――。
池田の上司だった官僚が、早期定年後に天下りとして時雨製薬の役員に就任した。その上司と池田は、かなり親密であったらしい。時雨製薬に上司が籍を移してからも、ちょくち ...
第十六話 CHAPTER5、突入(3)
その頃、新橋ダイヤモンドパレスホテルでは、川嶋がすでに待ち構えていた。田代から、郷原をどうにか回収したと報告を受けて、駆けつけてきたのである。本当は、久子も来ると言って聞かなかったのだが、まさか銃で撃たれているなどとても久子には言え ...
第十五話 CHAPTER5、突入(2)
シュンシュンと、やかんの口から湯気が噴出す。
さっきまで戦場のように緊迫していた空気が、だいぶやわらいでいた。
それでも床に転がされた谷中と、縛られた池田の構図が、まだ緊張感の残滓ざんしを漂わせていた。 ...