前編完・卑怯なキス
あかりが、八溝山ふもとの街の病院で手術を受け、病室に寝かされたのは、12月31日の午前4時頃だった。
医師の話では、あと2センチも傷が上だったら、腎臓が破裂して助からなかっただろう、という話であったが、幸いなことに腎臓 ...
CHAPTER7、逃走(2)
郷原は、新橋ダイヤモンドパレスホテル近くの、土橋インターから首都高速道路に乗ると、西銀座ジャンクションから江戸橋ジャンクションを抜けて、首都高速6号向島線に入った。年末の30日だというのに、相変わらず首都高は渋滞気味でイライラした。一 ...
CHAPTER7、逃走(1)
「こうなりゃ、郷原にすぐ、こいつを引き渡すしかねぇ……」
運転手の石塚は、ハンドルを必死に押さえて言った。
「しかし、果たして、女と引き換えだったとして、郷原が来るでしょうか……? 長年、否定し続けてきたので ...
CHAPTER6、黒い龍(3)
あかりは恐怖を感じて、思わず散らかった室内を後ずさり、物陰に隠れた。
人影はせわしなく鍵を開け、プレハブ小屋のサッシの入り口を開けると、懐中電灯で室内を見回した。
「おい、居るのか? 大丈夫か?!」 ...
CHAPTER6、黒い龍(2)
朝になり、田代が郷原のホテルの部屋を訪ねてみると――。
「うわぁッ!! な、なんじゃこりゃあ!!」
田代は、のけ反るほどに驚いた。郷原がブツブツと、幽霊みたいに何事かつぶやきながら、天体暦と ...