VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 その頃、新橋ダイヤモンドパレスホテルでは、川嶋がすでに待ち構えていた。田代から、郷原をどうにか回収したと報告を受けて、駆けつけてきたのである。本当は、久子も来ると言って聞かなかったのだが、まさか銃で撃たれているなどとても久子には言え ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 カウンターの上の水割りグラスの中で、大きな氷がくるりと揺れた。自分以外にお客のいない店内。妙に静かだった。

 カウンターの奥では、十数年来の愛人である久子が、川嶋のために惣菜を作っている。その顔を、水割りを飲みながら時折 ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

  郷原の耳に、かつて占い師の騙しの手口を叩き込んでくれた老人の声が響く。

(いいか郷原。人間の真実はたった一つ……。欲だ。人は誰もが醜みにくい、欲望という名の汚物を抱えている。神秘など信じるな……。人間の醜い欲だけを信じ ...