VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

  時刻は10時を30分回ったが、桂川興産の連中とおぼしきやつらは、まだ現れない。

 郷原は、浜崎に、自分の携帯電話を渡しておいた。それからひとり男子便所に入り、便器を一つ陣取って、ドアの外に故障中の張り紙をした。便座の蓋 ...

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  郷原の耳に、かつて占い師の騙しの手口を叩き込んでくれた老人の声が響く。

(いいか郷原。人間の真実はたった一つ……。欲だ。人は誰もが醜みにくい、欲望という名の汚物を抱えている。神秘など信じるな……。人間の醜い欲だけを信じ ...

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 田代の話は、こうだ。

 しらゆりテレフォンサービスに、郷原から託された、03―××××―△△△△という番号を調べに行った田代は、そこの社長からこの番号をここ何年も、ずっと使っている業者が“桂川興産かつらがわこうさん”とい ...

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 午前8時を回った。

 新橋ダイヤモンドパレスホテルの高層階スィートルームで夜を明かした4人は、ほんの3、4時間休んだだけで、すぐに次の行動へと移っていった。

 山本の両親を今日中に、しかもできるだけ早い時間に ...

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「星が、そう指し示している……。何かを隠すためのアイテム……。それらの販売……。山本さん、アンタが詐欺に遭ったファインメディカルだけど……」

 郷原は、ソファから身を起こして、山本のほうを向いた。

「そもそも、 ...