第十二話 CHAPTER4、罠(2)
カウンターの上の水割りグラスの中で、大きな氷がくるりと揺れた。自分以外にお客のいない店内。妙に静かだった。
カウンターの奥では、十数年来の愛人である久子が、川嶋のために惣菜を作っている。その顔を、水割りを飲みながら時折 ...
第十一話 CHAPTER4、罠(1)
時刻は10時を30分回ったが、桂川興産の連中とおぼしきやつらは、まだ現れない。
郷原は、浜崎に、自分の携帯電話を渡しておいた。それからひとり男子便所に入り、便器を一つ陣取って、ドアの外に故障中の張り紙をした。便座の蓋 ...
第十話 CHAPTER3、調査(3)
郷原の耳に、かつて占い師の騙しの手口を叩き込んでくれた老人の声が響く。
(いいか郷原。人間の真実はたった一つ……。欲だ。人は誰もが醜みにくい、欲望という名の汚物を抱えている。神秘など信じるな……。人間の醜い欲だけを信じ ...
第九話 CHAPTER3、調査(2)
田代の話は、こうだ。
しらゆりテレフォンサービスに、郷原から託された、03―××××―△△△△という番号を調べに行った田代は、そこの社長からこの番号をここ何年も、ずっと使っている業者が“桂川興産かつらがわこうさん”とい ...
第八話 CHAPTER3、調査(1)
午前8時を回った。
新橋ダイヤモンドパレスホテルの高層階スィートルームで夜を明かした4人は、ほんの3、4時間休んだだけで、すぐに次の行動へと移っていった。
山本の両親を今日中に、しかもできるだけ早い時間に ...