VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 あかり――。

 深い霧の中で、懐かしい男の声がした。あかりは声のするほうへと夢中で走っていった。

(どこ……? どこにいるの? お父ちゃんっ! あたしはここにいるよっ! みんなみんな、誰も居なくなっちゃったよ ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

「あのね、一人で飲むからそんな、アル中みたいになっちゃうんだよ。落ち込んでたり、辛いときはね、余計に一人で飲んじゃダメなの。ずぶずぶになって、そんな自分にまた嫌気が差して、それを忘れるためにまた飲んでって、繰り返しになっちゃうんだよ… ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 郷原悟と、北山あかりが、なんとなく同じベッドで眠っていた頃、都内某所にあるボクシングジムでは、一人の男がスパーリングの練習をしていた。

 男の年齢は、かなり若そうで、青年といった感じであるが、顔色は冴えず、目の色は苦悩と ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 村井に指示を出し、池田にしばらく好きにして待つよう伝えたあとで、川嶋が郷原をすぐに怒鳴った。

「そうだよ! 寝てなきゃダメだ!」

 山本もすぐに川嶋の声に賛同して、どうやら悪寒がぶり返してきたらしい郷原を、寝 ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

  池田がまだ厚生労働省で、法人担当課長をしていた頃――。

 池田の上司だった官僚が、早期定年後に天下りとして時雨製薬の役員に就任した。その上司と池田は、かなり親密であったらしい。時雨製薬に上司が籍を移してからも、ちょくち ...