VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 村井に指示を出し、池田にしばらく好きにして待つよう伝えたあとで、川嶋が郷原をすぐに怒鳴った。

「そうだよ! 寝てなきゃダメだ!」

 山本もすぐに川嶋の声に賛同して、どうやら悪寒がぶり返してきたらしい郷原を、寝 ...

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  池田がまだ厚生労働省で、法人担当課長をしていた頃――。

 池田の上司だった官僚が、早期定年後に天下りとして時雨製薬の役員に就任した。その上司と池田は、かなり親密であったらしい。時雨製薬に上司が籍を移してからも、ちょくち ...

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 ドアを出るとそこには、池田史郎が静かに座り、川嶋貢が、部下とともに待っていた。

「山本先生、助かったよ。とりあえず、これは切ってもらってあった手形だ。約束した通りの金額ぶんを返そう。あと、これは処置代30万だ。足がつくと ...

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 田代は首を捻った。今、東京では、この司法書士、行政書士が過剰気味だとも言われている。その何割かは弁護士事務所やコンサルタント会社などに就職できず、かといって個人で大々的に商売をする体力もないから、自宅を事務所ということにして行う個人 ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者, 公開中の小説

 カウンターの上の水割りグラスの中で、大きな氷がくるりと揺れた。自分以外にお客のいない店内。妙に静かだった。

 カウンターの奥では、十数年来の愛人である久子が、川嶋のために惣菜を作っている。その顔を、水割りを飲みながら時折 ...