VICE-ヴァイスー孤独な予言者 Ⅱ, 公開中の小説

 

 朝になり、田代が郷原のホテルの部屋を訪ねてみると――。

「うわぁッ!! な、なんじゃこりゃあ!!」

 田代は、のけ反るほどに驚いた。郷原がブツブツと、幽霊みたいに何事かつぶやきながら、天体暦と ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者 Ⅱ, 公開中の小説

 もやのかかった砂浜――。霧にかすむ波間には、二つの大きな黒い岩……。しめ縄が巡らされている……。

 郷原は、その砂浜にポツンと一人、立っていた。

 誰もいない寂しい砂浜のはずなのに、強い視線を感じる……。ふと ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者 Ⅱ, 公開中の小説

 

 郷原は思わず刑事に掴みかかろうとしたが、田代がすかさず後ろから彼を取り押さえた。刑事は皮肉を込めて言った。

「ガールフレンドが誘拐されたのは、あなたが悪いのですよ郷原さん。最後の王朝だかなんだか知らないけ ...

VICE-ヴァイスー孤独な予言者 Ⅱ, 公開中の小説

「鑑識結果が出たらしいぞ郷原。座ってくれ」と、川嶋が促し、ソファに刑事二人を通した。

 郷原と川嶋がその対面の上座へ座り、田代は少し離れた簡易椅子に腰かけた。刑事たちは挨拶もそこそこで、すぐに結果報告が始まった。

VICE-ヴァイスー孤独な予言者 Ⅱ, 公開中の小説

 翌日、午後4時を過ぎて田代は、ようやく広尾の大使館で働いているという、江川夏実の過去を知る人物と会った。彼女はカリフォルニア大学ロサンゼルス校に、夏実と同じ頃留学し、夏実と同じ国際政治学部で学んでいたという。

 開口一番 ...