前編完・卑怯なキス
あかりが、八溝山ふもとの街の病院で手術を受け、病室に寝かされたのは、12月31日の午前4時頃だった。
医師の話では、あと2センチも傷が上だったら、腎臓が破裂して助からなかっただろう、という話であったが、幸いなことに腎臓 ...
CHAPTER3、導師クリシュナ(2)
「……どういうことですか夏実。女性を拉致するだなんて。私はそのような指示は出していません。ただ、郷原が間違いなく持っているはずの、不比等の金印を見つけ出し、ヤツに謎かけの招待状を渡せればそれでよかった」
電話は、クリシュ ...
CHAPTER2、連れ去られたあかり(1)
場面変わって、北山あかりのそれからである。
新潟にある老人施設に入れられた祖母に、面会しに行った北山あかりは、施設の外にタクシーを待たせて祖母と会ったが、その変貌ぶりに愕然とした。最後に祖母に会った時は、まだ普通に歩い ...
CHAPTER1、あっという間の再会(3)
「もう嫌……。どこに行ったらいいの……? あたし……」
あかりがポケットに手を入れて、深いため息を吐き、歩き出そうとした次の瞬間。「げぇッ!! オエッ!!」と、誰かが吐いているような音が聞こえた。
(何? ...
CHAPTERⅠ、あっという間の再会(2)
その数時間前のこと――。
郷原の部下で、かつ、お守り役である元刑事の田代英明は、家の中で、今日、病院から帰ってきたばかりの母親と、息子の直人から、白い視線を浴びせられていた。
特に、田代の息子、直人の視線 ...